New Brands 【pillings】
こんにちは、千枝です。
2026年秋冬より、Altamiraに新しいブランドが加わります。
pillings(ピリングス)。


今回、私自身もとても楽しみにしていたブランドです。
私が初めてpillingsの服を見たのは、前回パリを訪れた時でした。
LVMH Prize 2025のセミファイナリストによるプレゼンテーション会場。
世界各国から選出された20組のデザイナーの作品が並ぶ中に、日本から選ばれたpillingsがありました。
そこで展示されていたのが、真っ赤な手編みのニット。
大きな編み地が立体となって身体を覆い、ニットという素材そのものが造形になったような一着でした。
私がpillingsというブランドを知ったのは、この服が最初です。
pillingsを手掛けるのは、デザイナーの村上亮太氏。
2014年に自身の名を冠した「RYOTAMURAKAMI」をスタートし、2020年にブランド名を「pillings」へ変更しています。
ブランドの原点にあるのは、村上氏が幼い頃、お母様に編んでもらっていたセーター。
現在もハンドニットを重要な表現のひとつとし、熟練したニッターたちとともに服を作っています。
「pillings」とは、毛玉を意味する“pilling”の複数形。
一般的には衣服の欠点として扱われる毛玉を、長く着ることで生まれる時間の痕跡として捉え直す。
そして、デザイナー一人ではなく、編み手を含めた複数の人の手によって服を作っていく。
ブランド名そのものに、pillingsのものづくりに対する考え方が表れています。

そして、今季の2026 Autumn / Winter Collection。
タイトルは、
「Landscapes」。
今シーズン、村上氏が目を向けたのは、私たちが普段から目にしている日常の服や風景です。
明確な正解や完成された美しさを求めるのではなく、その間に存在する曖昧さから新しいものを見つけていく。
リアルとファンタジー。
正解と不正解。
その境界にあるものを、服へと置き換えています。
実際にコレクションを見ていくと、その考え方がとてもよく分かります。
普通の服が、少しおかしくなる瞬間。
カーディガンなのに袖が不安定。
カーディガンなのにボタンを掛け違える。
ノルディックなのに襟ぐりが崩れる。
ベストなのに表面にコブが出る。
スカートなのにウエストが定まらない。
ロンTなのに、縮絨ニットで起きる素材の収縮差をギャザーで再現する。
タートルニットには、ネックレスを通すための穴が開いている。
しかも、奇抜さを目的にしていない。
既に知っている服の構造をほんの少し狂わせることで、新しい服にしている。
私は、ここがpillingsのとても面白いところだと思っています。
装飾を加えることで個性を作るのではなく、
編む。
縮める。
留める。
余らせる。
服を作る工程や構造そのものをデザインへと変えていく。
だから一見するとカーディガンであり、セーターであり、スカートなのですが、よく見ると私たちが知っているそれとは少し違う。
その小さな違和感が、服の表情を大きく変えています。
そして今回、展示会で私が特に惹かれたのがカシミヤのニットでした。
ここ数シーズン、上質なカシミヤを日常的に着るという選択肢が増えていて、私自身もカシミヤという素材には興味がありました。
でも、上質でシンプルなカシミヤニットには、なかなか「欲しい」とまでは思えなくて。
そんな中、pillingsの展示会で実際に触れたカシミヤは、まず触った感触が本当に素晴らしかった。
そして何より、素材の良さだけで服が完結していませんでした。

今回セレクトした《cardigan with unstable sleeves》は、ロロ・ピアーナ社のカシミヤ糸を100%使用した手編みのカーディガン。
肉厚で柔らかなカシミヤの中から、大きく膨らんだ袖が現れます。
商品名の通り、“unstable=不安定”な袖。
極上の素材を、端正で美しいカーディガンに仕立てるのではなく、その輪郭そのものを崩してしまう。
それでも、ちゃんと着たいと思える服になっている。

もう一型のカシミヤカーディガンも、ロロ・ピアーナ社のカシミヤ糸を100%使用。
こちらはより日常的な佇まいですが、前立てから裾にかけて編み端が自然にカールし、フロントの輪郭を崩しています。
触れた瞬間に分かる素材の贅沢さ。
でも、それだけではない。
欲しいと思えるカシミヤニットに、初めて出会った。
私にとって、pillingsをセレクトした大きな理由のひとつです。
そして、もう一着。


手編みからは《wide-neck nordic sweater》もセレクトしました。
誰もが知っているノルディックセーターというアイテムに対して、ネックラインを大きく開き、そこから生まれるドレープによってシルエットを崩しています。
伝統的な柄と手編みの温度を残しながら、その完成された形を少しだけずらす。
これも、今季のpillingsをとてもよく表している一着だと思います。



一方で今回のAltamiraでは、pillingsの手仕事やカシミヤだけをセレクトしたわけではありません。
ハイゲージのカーディガンやタートル、マシンニットのベスト、カットソー、スカートまで幅広く選びました。
ボタンの掛け違い。
編み地のコブ。
縮絨による素材の変化。
余った布。
本来なら整えたり、直したり、欠点として取り除いたりするものを、pillingsはそのまま服の魅力へと転換していきます。
そこには高度なニットの技術があります。
けれど、その技術を見せつけるための服ではありません。
技術があるからこそ、崩せる。
正しく作れるからこそ、あえて正解から少しだけ外すことができる。

私は今回のコレクションを見て、pillingsの面白さはそこにあるのだと思いました。
パリで初めて見たpillingsは、強い作品性を持った真っ赤な手編みのニットでした。
そして今回、改めてコレクションを見て、実際に触れて、袖を通してみると、そのクリエーションが私たちの日常で着る服の中にまできちんと繋がっていることが分かりました。
カーディガンも、セーターも、タートルも、スカートも。
知っている服なのに、少し違う。
その違和感が、着るとちゃんと魅力になる。
2026年秋冬。
Altamiraに新しく加わったpillingsを、ぜひ実際に手に取ってご覧いただきたいと思います。
chie