THE RERACS for Altamira&Unlimitedlounge vol.1
こんにちは、千枝です。
今回のブログは特別編。
週末に発売予定の THE RERACS 別注の企画経緯や素材への拘り、
デザインへのこだわりへと昇華する長編インタビュー記事となっています。
是非ご覧くださいませ。
Release date: 4/26(sat) 12:00-
online:4/26 19:00-
AltamiraとUnlimitedloungeは
両店舗の合同企画として
THERERACSと数々の
”BLACK別注”アイテムを取り組んで参りました。
THERERACSの物作りの素晴らしさを伝えるべく、
デザイン、素材、ディテール、設計、生産背景など
全ての要素が噛み合うことで生まれる無二のプロダクトに
フォーカスすることで皆様が袖を通す洋服への理解が増し、
その信頼感だけでなく、愛着も生まれることが
最終的にファッションの良いサイクルに繋がると私達は考えています。
そして、
今回の企画に関しましては
ブランドの最大の強みでもある
”素材”に着目した内容にしたいと
昨年から両店舗で決めていました。
私達が注目したのは
〈 PE SUPER LIGHT SPUN 〉
コレクションでは主にシャツに採用されている素材
今回BLACKカラーを特別に制作をして頂きました。
しかし、その魅力をどのように
皆様にお伝えすればと悩んでいたところ
”作り手の声”を届ける事がベストだと思いまして
THERERACSのアトリエへお話しを伺ってきました。
今回の別注に関してのBLOGは、
特別編ということで
THE RERACS ディレクターの倉橋直行氏、
デザイナーの倉橋直実氏にインタビューを敢行。
ブランドのファン方は既に国内の著名なメディアをはじめ
百貨店の記事を読んでいらっしゃる方も多いと思いますが、
私達のようなお店が行うのはもしかしたら初かもしれません。
良い意味で人間味や温度感をそのままに感じて頂けたらと思います。
最後までお付き合い下さい。
それでは。
鵜飼&松原(以下U&M):本日は宜しくお願い致します。
早速ですが今回別注させて頂いた素材に関してお聞かせ頂けますでしょうか?
倉橋直之氏(以下NY)&倉橋直美氏(以下NM): 宜しくお願いします。
(NY):このポリスーパーライトスパンは、綿タッチな素材ですけど、
実はポリエステルの”タスラン糸”を使っています。
U:本当にポリエステル?って疑うぐらいの質感とタッチですよね。
実際に使ってみると綿では有り得ない使い心地に一発で虜になりました。
NY:最初はこれをシャツで使うつもりはなかったんです。
日本トップの合繊生地開発の会社があり、そこで試験され開発された
生地のプロトタイプがあってそれは世界最細のタスラン糸を使用して
て、スパンタッチ(コットンみたいな雰囲気)はあったんですよね。
まだまだシャツで使えるレベルものではなくて、一回ミリタリーの
ブルゾンみたいなものを作ったんですよ。それ着ていて家帰って
洗濯機に入れてみてパッと出てきた物が何にも変わっていなくって
それを見てびっくりして
やばいぞこれは、、、と。
M:へぇ。素材としての新しさに興味をお持ちだったから試しに
作ってみて、そして使ってみて気付けた部分なんですね。
使ってみてからも洋服って大事ですもんね。
NY:そうなんです。この状態ではまだ合成繊維タッチなんですけど、
これを生地の生機の段階で減量と言って製造工程で
少し痩せさせることで、柔らかくして、
かつ糸の構造を紡績から作って行けば可能性あるなと。
実は、わざとちょっと汚い断面にしているんです。
U:それは何故ですか?
NY:ポリエステルってのは、糸が均一なんで反射が平面的になって
ピカーっとなってしまうんですよね。
コットンやシルクのような天然素材は乱れているんですけど、
これを人工的に紡績の段階から作り出しているんですよね。
U:うわっ。めちゃくちゃ大変そう。
THE RERACSが使っている素材って素晴らしい物ばかりですし、
わざわざそこまでして開発する必要はあったのでしょうか?
NM:その当時は、ドレスシャツ工場の仕事が激減している
状況でした。その背景にはスーツ需要が減っていて、
ドレスシャツの大きな生産数はスーツメーカーの仕事が多く
ドレスシャツ工場が弱体化していく現象になってきていました。
U:確かにドレスシャツ工場で縫ってるだろうなって顔のシャツって
多くはない印象ですね。RERACSのテーラリングもそうですし、
素晴らしい技術を持つ日本の工場さんに対して
積極的に仕事依頼をするそのマインドも素敵だなと思います。
NM:今はその弱体化しているのにも関わらず、
皆が工場を取り合ってキャパオーバーして
世の中が悪くなるような状態になっています。
M:それも工場さんが大変ですね。
廃業してしまうこともあったり、作れなくなってしまうことから
手の良い職人さんのところへ集中してしまうということなんですね、、、、
NM:弱体化してしまった要因としては、アイロンをかけることが
ドレスシャツのハードルを高くしているのだと思います。
私と倉橋は自分達でかけて着るのですが、
確かにこれを普通の人に要求するのはハードルがかなり高くて、
ドレスシャツに正しくアイロンをかけることを家庭でやるって
物理上難しくて縫い代が当たったりとか
必ず劣化するような方法になってしまう。
だからクリーニング屋に一生出し続けなきゃいけないっていう。
だからワンウォッシュのカジュアルな物が良いってなる。
じゃあ一生ドレスシャツってファッションの世界で
一生売れなくなってしまうと感じていました。
U:それは消費者からするとドレスシャツのハードルが必然的に
上がってしまいますね。着た時の気分の上がり方と着た後の
メンテナンスを天秤にかけてしまうかも、、、
NY:でもこの素材とドレスシャツの組み合わせたらとんでもないものが
できるんじゃないかって。それで作り上げていったんですね。
最初からうまくいくわけもなくて2回ぐらい試作をしました。
ちょっと硬いなとかこれだと天然繊維っぽくないなとか。
それで素材は開発していったという感じですね。
偶然から生まれたんですけど、
今ではなかなか他社では作れない生地だと思います。
M:なかなか他社では作れないという理由は?
NY:相当難しいし大変だと思う。
それは、開発するのに使用できるかわからない素材を、
数万メートル発注していくからです。
M&U: !!!!!!!!!
その量は途轍もないですね、、、
使用できるか分からない素材を数千万円分ってことですよね。
NY:その量をリスクを持って作らなければならない。
チップと言ってポリエステルの原型のものから開発を始めています。
節目は紡績方法は破断面というか三角の断面になっているので
天然繊維にかなり近いんです。
M:へぇ。だからあの肌触りですし、速乾性もあるんですね。
NY:そうなんです。
逆にいうと節目がないっていうと人間は天然繊維って判断
できないんです。この節目が存在していなかったら合繊なんです。
天然繊維は節目が高密度に入っているってこと。
2018年に開発していて、この数年で似たようなものは
ひょっとしたら世の中にでてきているかもしれませんが。
U:THE RERACSって素材開発のパイオニアだと私は思っていて、
それがきっかけで素材の世の新しいトレンドを生むポジション
ですから参考にされることは全然あり得そうですね。
天然繊維も大好きですが、御社の合繊にはいつも驚かされます。
使えば使うほどその素晴らしさに気付いて
今回の別注へと繋がっていきました。
NY:この素材は我々しか販売できない契約になっています。
ただ年間500反を発注しなければなりません。
M:想像を超える発注量ですね。その量の生地発注となると
生地屋さんもありがたいし、縫製工場さんもありがたいですよね。
NY : ちなみに昔やっていたKBBという素材もそういう感じでした。
半分は某イタリアブランド、半分はうち、そこが減った時は
某フランスブランドみたいな感じでしたね。
あれは織れる量が決まっていて最初から年間契約でした。
U : 綿のモノと違って色が落ちないんですけど、
それはなぜですか? 4-5年前に買ったこの素材のNAVY半袖シャツが
未だに新品みたいな深い色のままなので真夏の日差しでも
全く気にせず着られて毎年必ずお世話になっています。
NY : それは、反応染料と分散染料ですね。
超高圧、超高温でかけないとポリエステルって染まらないんですよ。
逆にいうと同量の熱量や圧力をかけないと科学的には色は
抜けないですね。結合は離れないです。
人間の生活の中でそれだけの高温、高圧力を当てることって
不可能なんでたまに色移りしちゃうと感じる時はひょっとすると
表面にある繊維が摩擦で削れて粉になっているのが染料飛びして
見えてしまうことはあるかもしれないですね。
削れた繊維は少し起毛してその部分が乱反射して白く見えるという
ことなので色は落ち得ないです。
なので黒をシンプルにずっと美しく着たい人にとっては
最高の素材ではあるかもしれないですね。
M : 普段生活している中で擦れやすい襟や肘部分もこの素材だと
毛羽立って薄くなっていくようなことも起きにくいってことですよね?
NM: 何十回、何百回と洗濯をして、強く擦れるような洗い方を
すると多少はあると思います。ただ、ケア方法で書いてある
手洗い、影干しを守って頂ければ大丈夫です。
NY : 洗濯機は本当は全然大丈夫です。
U : ですよね。ネットに入れずにそのまま洗濯機に入れて脱水して
普通に干しておくだけで翌日にはすっかり乾いています。
しかもアイロンなしですぐ着れますし、魅力的ですよね。
どうしたらそれだけタフな生地に仕上がるのでしょうか?
M:そしてRERACSって値段も魅力的ですよね。
なぜなんですか?
NY:実は、生地値でいうとおそらく日本の生地屋が
持っているスーパー原料は全て把握していますけど
これは、suvinの160番よりも高いです。
M&U : それでシャツ類が2万円台ですもんね。
生地値をお聞きする限りポリエステルだから
この価格になっていると感じではありませんね。
NY:そうなんです。ハイブリットという概念が安くするための
合成繊維でなく、皆のもしくは天然繊維の機能価値を複合したり、
補填する事で現代における最高機能を発揮して進化させていく感じ。
それはお客様にとっても、工場さんにとっても良いですし。
M&U:素晴らしいです。
そして凄い事を凄いと思わず進んでいくタイプの人ですもんね(笑)
M : 素材に関しての質問を最後に一つ。
THE RERACSにとっての良い素材とは?
NY : 創業時は天然素材の最高峰希少原料を研究してきました。
例えばシベリアンアイベックスとかカシミヤよりも高級なウィントン
ウールとか今ではメジャーになったSUVINGOLDのデニムを
10年以上前に作ってみたりとかあらゆるスーパー原料に
トライしてきました。
ヨーロッパ発祥のF1もガソリンエンジンからハイブリットのパワー
ユニットになった様に、素材にもクラシックと現代の技術を融合させ
進化していく部分があると思っています。
差別化しようとハイスペックに行き過ぎた結果、最高なものは
もちろんいいんですけど、一番その洋服そのものに適している、
正しいところはどこなのかということを考えています。
U : 深いですね、、、、
NY : 綿のスーパー原料というのもずっと研究をしてきていたの
ですが浜松にある生地屋さんが廃業してしまったり純粋な
giza45 はalbini社でしか存在しない状況になってしまってから
辞めました。新しいトライアルをしなきゃいけないという
こともありこの素材へと繋がっていきました。
この素材ができた時コットンの生地屋さんが触って
良い綿だね、、、と言われて”おっ”となりましたね(笑)
M&U : おお!(笑)
それは嬉しすぎるリアクションですね。
U : 倉橋さんすみません。最後と言っていたのにもう一つだけ、、、
紡績のことと織りのことをもう少し教えてください。
NY:この紡績方法を日本でやることがロマンだとは思うんですけど
これは逆にいうと海外の超高度な紡績機がないとできないんですよ。
だから糸までは海外で作らないといけないんです。
これはコストダウンしてるって意味ではなくて、
その紡績機がないってことなんです。
その後日本に持ってきて織るんですけど、縦糸緯糸スパン糸で織れる
生地屋さんが少ないんですよ。めちゃくちゃ綺麗な天然繊維の糸を
綺麗に織るのは長けているんですけど逆にいうとランダムな合成
繊維を綺麗に織るってことが実はめちゃくちゃ難しいんですよ。
要は糸を汚くしてすごい綺麗な設計で織るってことができないと
コットンタッチなものができないってこと。
U&M:なるほど。
NY:他の皆さんは開発者として最高のものを提供しようと思ってる
からこそ、綺麗な糸で綺麗な設計をと考えてカジュアル感を出す
ために加工を入れて染めてって感じ。
生地自体に凹凸でシワっぽくなるからコットンタッチには、
なるけどそれだけでは天然繊維にはならないんですよね。
やっぱり糸段階で接触面積にムラができるような設計を組んでおいて
そっから綺麗に作っていかないと天然繊維のような質感でシワに
ならないとかシルエットを作り出せる繊維っていうのを
化合成繊維で作ることは不可能かなって。
最後つまんなくなってしまいましたね、、、
U:いえめちゃくちゃ大満足です。ありがとうございます。
M:なんかめっちゃ難しいな、、、
全員:笑
〈 vol.2 に続く〉